翻訳のデザイン&評価

 

翻訳には、出版翻訳、産業翻訳、映像翻訳など様々なジャンルがあります。それぞれの分野にはそれぞれに適した異なるアプローチが必要ですが、共通しているのは「いつ誰に、何の目的をもって、どのような形で翻訳を提供するか」が重要だということです。

 

たとえば、日本語から英語に翻訳する日英翻訳の場合、「このような翻訳をやりたいのだが……」と、依頼者が元の和文原稿をそのままの形で翻訳会社に持ち込むケースは数多くあります。そのとき翻訳者は通常、依頼者の指示通りに翻訳しますが、その過程で大いに悩むことがあります。この情報は果たして英語の読者に必要だろうか、日本的な論理構造で書かれた文章をそのまま直訳して、英語の読者がすんなり理解できるだろうか、そのようなことです。

 

結局、真面目な翻訳者(または翻訳会社)は、依頼者に直接それらの疑問をぶつけることになり、依頼者はそこではじめて翻訳の難しさを知ることになります。ですから、翻訳の「デザイン」というと大げさに聞こえますが、翻訳を開始する前に、翻訳の目的を考え、読者対象をしっかり想定し、文字量やレイアウト、予算や納期なども含めた総合的なイメージを固め、翻訳者とそれらの情報を共有してください。

 

綿密にデザインされ、優秀な翻訳者が手掛けた翻訳は、その時点である程度の質が確保されますが、問題はそのあとです。原文とのずれがないか、テクニカルタームが間違っていないか、細かいミスがないかなどの技術的なチェックはもちろん、文章として読者が理解しやすい流れになっているか、簡潔で読みやすいか、依頼者が訴えたいことが鮮明に読み取れるか、などをしっかり検討する必要があります。それが「評価」です。

 

この「評価」は、翻訳者や翻訳会社だけの問題ではありません。翻訳の受益者はあくまでも依頼者ですから、そこは専門家や自分自身の目でじっくりと確認する必要があります。

 

参考文献として、『英日日英 プロが教える基礎からの翻訳スキル』(三修社、田辺希久子・光藤京子)、『誤訳ゼロトレーニング』(秀和システム、光藤京子)、『翻訳力を鍛える本』『新 翻訳力を鍛える本』(イカロス出版、)の4つを挙げておきます。『誤訳ゼロトレーニング』は、誤訳撲滅のためのテクニックをはじめ、顧客側から考えた翻訳のデザインと評価も扱っています。『翻訳力を鍛える本』『新 翻訳力を鍛える本』(後者ではp50-55までを主催者が執筆)は品質管理の手法やITツールなどが細かく紹介されています。ぜひ参考になさってください。